先日twitterで起こった議論で、おもしろい結論になったことがあるのでまとめておこう。
発端は「偏差値はマイナスになることがあるか」という疑問だった。
そもそも「偏差値がどのように算出されているか」はあまりよく知られていない。ここでは必要最低限のことだけを書くが、偏差値は次の式で定義される。
ここでは得点、mは平均点、は標準偏差である。標準偏差とは、簡単にいえば「平均値から何点離れているか、ということの平均」のようなものである。
直感的にわかるとおり、が-50以下となれば偏差値はマイナスになる。だがは平均値、さらに得点の二乗の平均値の関数になっており、簡単にはそこから偏差値がマイナスになりうるかを考えるのは難しい。
ただ、マイナスに「なることがある」ということを証明するには、そのような例を出せばよい。そうなりそうな例では、「平均値が高く」「標準偏差が小さい」ものを考えればよい。
そこで次のような例を考えてみよう。N人が受験した試験で、ただひとりだけが0点を取り、残りの(N-1)人が100点を取ったとする。現実にはかなりありえなさそうだが、それはさておき、これについて具体的に偏差値を考えてみる。
結論の羅列になるが、実際に計算してみると平均値は
標準偏差は
となる。したがってただ1人だけ0点を取った受験者の偏差値は
となる。つまり人数が増えれば増えるほど、0点を取った受験者の偏差値はマイナスどころか無限に落ちていくことになる。
一方100点を取った大多数の受験者の偏差値はというと、
となる。つまり人数が増えれば50に限りなく近づいていく。
僕はこれがある意味社会の縮図のように思えた。社会では大多数の人間は100点を取れる。というか大多数の人間ができることが100点だと決められている。そのなかで大多数から落ちぶれる人もごくわずかにいる。
社会が大きくなればなるほど人も多くなる。そうなれば大多数の人は均質化していく。ところが落ちぶれた(とされる)人はそのままでは無限に落ちていくのである。
まあこれは極端なケースだしあまり厳密な話ではないが、考え方としてはなかなかおもしろいと思った。