青ポスの部屋

旅と技術とポエムのブログ

201508北海道旅行その3「災難」

はまなすを降りて改札を出ようとすると、とんでもないことに気づいた。

きっぷがない。どこにもない。

かばんをひっくり返して探したものの、ズボンのポケットにも、貴重品を持ち歩く用の手提げにも、書類を持ち歩くクリアファイルにも入っていなかった。パスケースごとどこかに行ってしまった。

このままでは改札を出られないので、状況を説明した。なんとか切符を持っていたことは認めてもらえ、紛失物として探すよう手配してもらった。出てくるとしたらこの日のうちとのことだった。

しかし、改札を出てもなお、切符をなくしたことに茫然自失としていた。まず大切な切符をなくしてしまう自分にあきれてしまった。もし駅員さんが親切じゃなければ運賃を払いなおさせられていただろう。

それにもまして、旅の思い出の一部である切符がなくなってしまったことに、強烈な喪失感を覚えた。今回は券面が転写印字になるよう購入場所まで考えた急行券、北東パスをなくしてしまった。今後はまなすに乗る機会はないかもしれないし、石越駅で話をした駅員さんに押してもらった下車印もなくなってしまったのだ。

かといってここまできて旅行を取りやめることもできない。不幸中の幸いで、赤春と1日目に買った18きっぷ急行券と北東パスを入れていたパスケースとは別にファイルに入れていたので、夜までに出てくることを信じて、帰りに使うつもりだった赤春で回ることにした。

まず、札沼線石狩当別新十津川と走破した。札沼線はかつては札幌から留萌本線の石狩沼田までを結んでいた路線で、新十津川-石狩沼田間が廃止となってからは盲腸線となっている。しかし新十津川から函館本線滝川駅まではかなり近く、路線バスでいくことができる。

石狩当別までの間は「学園都市線」として通勤通学路線になっている。しかし石狩当別を過ぎると状況は一変しローカル線の様相を見せてくる。新十津川まで行く列車は1日に3本しかないという有様だ。

車内では、隣席の人も乗り鉄だったようで、僕の赤春に興味津々だった。数年前まで最も東では筒石駅で売られていた常備券18きっぷだが、北陸本線三セク化により首都圏以北で常備券18きっぷを手に入れるのは難しくなっている。というより、そもそも道内を回るには北海道東日本パスのほうが得で使っている人も多いようだ。もちろん相手に悪意はまったくないのだが、傷口に塩どころか練りハバネロを塗りつけられるような話だった。

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新十津川駅では、近くの幼稚園の窓から子供たちが「おはようございます」と大声で出迎えてくれた。しかし駅の周りは農場か工場の倉庫のようなものと新十津川町役場しかなかった。役場の近くのバス停からバスで滝川へと出た。

滝川から深川までスーパーカムイを使った。北海道は本数も少なく特急を使っていないとやってられないので、1駅なら自由席特急料金が特定料金でもないのに安い。

深川から留萌本線に乗車。まずは留萌で降りてみた。留萌駅では、留萌駅と無人駅である増毛駅の硬券入場券が売られている。「増毛」駅ということで縁起担ぎに買いに来る人も多いが、残念ながら来年には増毛はなくなる。なんとも縁起の悪い話だ。

留萌では名物にしんそばを食べた。留萌ではにしんがよくとれ、京都とならんでにしんそばが名物になっている。しかしつゆは京風ではなく関東風の濃い口だ。僕は関西人だが、関東風のだしもおいしかった。もちろん乗っているにしんの甘露煮もおいしかった。

1時間くらいあったので「海のふるさと館」というところまで留萌の町を歩いてみた。感覚としては、古い情緒ある港町という感じだった。古いといってもレンガ倉庫などに感じるレトロさではなく、うちっぱなしのコンクリの建物や錆びた鉄製の建物に感じるような、無骨さのようなものだ。海のふるさと館は少し高い場所にあり、景色がきれいだった。留萌の自然が主な展示内容だった。

その後、廃止される区間である、留萌増毛間を乗車した。この区間はがけがせり出している沿岸を走っているので、前の冬はなだれの危険からずっと運休していた。そのためこの先も安全運行が保障できないとして廃止される。

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増毛駅はまさに車止めを作ってホームをつけただけのような格好で、その脇に駅舎が建っていた。駅員はいないが中には地元のみやげ物店が入居している。留萌ほど時間がなかったので、近くの灯台に登って帰った。

この日は札幌まで帰って札幌のネットカフェに泊まった。夜に札幌に戻ったときも念のため問い合わせたが、結局朝になくした切符は出てこなかった。