前回に続いてサンデルの本です。有名な「トロッコ問題」を取り上げた本です。
トピック
前回読んだ「それをお金で買いますか」と異なり今回は講義録のようなテキストなので、テーマが移り変わっていきます。
カントの道徳論
- 「汝の意思の格率が常に普遍的な道徳法則に妥当するように行動せよ」
- 難しい言い回しだが、要するに「お天道様に顔向けできないようなことはするな」というような趣旨。
- 「普遍的な道徳法則」というものが存在するという仮定での議論。
ロールズの公正さについての議論
無知のベールに包まれている状態で選択するという議論。
- ロールズ的には、いい大学を卒業したりプロスポーツで一流になったとしても、それは努力も含めて「たまたまそれができる身分に生まれたから」ということに過ぎず、何ら道徳的に優れているというわけではない。
- ちょっと前に話題になった上野千鶴子氏の入学式の式辞もこの考えに近い。
- ただしこれを直すことは現実的でないので、功績を上げられた人はそうでない人に利益を還元するシステムを理想とする。
具体例:アファーマティブアクション
人種の割合が公平になるように定員を操作するということ。これに対して逆差別なのではないかという裁判が起こっている。
- 著者は、大学の使命は多様な社会に教養を広めることなので許されるという立場。
- 日本では「医学部の定員を男女同数になるようにする」というような議論。
- 日本はアメリカと異なり男性と女性が完全に別の社会に属するというわけではないので事情は微妙に異なる。
アリストテレスの共同体思想
人は政治によって共同体を営むことで善き生を送ることができる。
- 共通善が市民全体で共有されていることが民主主義のうまくいく条件である。
- そのため、社会が分断されることは健全な民主主義の発展にも有害である。
物語的観点
人は自らの生を物語としてとらえるという見方。著者がカント、ロールズ、アリストテレスの3者を総括して提起している。