青ポスの部屋

旅と技術とポエムのブログ

ポエム:格差からの脱出のための国立大学

どうしても何か書きたい記事を読んだので、書いてみる。

www.huffingtonpost.jp

要旨

  • 京大生は恵まれた家庭の学生も多いが、この記事に出てくる意識高いやつばかりではない。
  • 「地元から脱出するために大学へ進学すると、エリートと自分の差に愕然とする」ということはある。自分も同意する。
  • この記事よりさらに格差の大きな土地もあるので、教育の地方格差の問題はこの記事に書かれてある以上に根が深い。

自分の経歴

自分の学歴もこの人とどちらかといえば同じベクトルで、マイルドにしたようなものだと思う。ただ「育った環境に何らかの不満を持っていて」「そこから抜け出す手段として進学を目指した」というところは同じだ。

自分の場合、出身の公立中学が不良のたまり場で「こんな場所から抜け出したい」「進学校に行けば何かが変わる」という一心で勉強していた。

高校は進学校だった。このとき第一のカルチャーショックを受けた。みんな授業の前に「お願いします」とあいさつができて、授業は静かに行われ、終われば「ありがとうございました」とあいさつする。それだけのことに大きな驚きを感じた*1

今振り返っても高校のときは学校が楽しかったと思える。これが「高学歴コースへ進むと楽しい生活が待っている」という成功体験になって、大学選びにも影響したと思う。

高校でも成績は優秀で、この記事の筆者と同じ京都大学に進学した。そこでもカルチャーショックを受けた。高校入学時とは逆の意味で。大体記事と同じではある。

自分の知り合いは関西圏の名門が多く、自分のような「脱出組」は少なかった。親が医者という学生もいて、転勤族(つまり全国に事業所があるような大企業勤め)の子供も多かった。

でも、記事とは違ってみんながみんな「大きな目標があって、それに対するライフプランがある」やつではなかった。というか、逆に「モラトリアムを謳歌してやる」みたいな学生が多かった。サークルでは「サークルに集中しすぎて留年しても仕方ないだろ」みたいな態度で仕事を積まれたこともあったし、現に留年した友人も複数知っている。

この時感じた感情は、一言で表せば「嫉妬」や「羨望」だと思う。自分は必死にもがき続けなければ、留年などしてしまうと再び貧乏生活に転落してしまう。だが周りの学生の多くは違う。当然どんなコミュニティにおいても自分より恵まれた人はいるのだが、過半数がそれだと「自分のみじめさ」がふとした瞬間に降ってくる。

自分はそれがただちに是正されなければならないものだとは思っていない。なぜならそんな簡単にできるものでもないからだ。「恵まれた学生が優秀な大学に進学しやすくなる」という傾向は、進学の自由を保障している限り拡大の方向に圧力がかかる。現実的には、その圧力に反抗して拡大していくのに反対する程度が限界だろうと思う。

もっと恵まれない地方

この記事の筆者の方は地方都市出身とおっしゃっているが、もっと恵まれない場所はこの国にごまんとある。その一つが、離島だ。

自分の母親の出身地は長崎県五島列島だ。旅行記でも書いたことがあるが、そもそも九州まででも半日かかるような場所だ。「大学に行くまでに何時間もかかる」という時点ですでに教育格差のあおりを食うポジションにある。

そんな離島ではさらに教育環境はひどくなっている。自分が小学生のときには母の島には書店はまだ1軒は残っていたが、全部で都会にある本屋の参考書コーナーレベルの広さしかない。過疎化や少子化によって店はどんどんつぶれる。当然その中には書店も含まれる。

「ITの活用で教育格差は埋まる」ということはよく聴く。しかし、母の島では少なくともフレッツ光を一般人が契約することはできない。つまりインターネットという集合知に触れる手段さえ制約されている。一応最近は4Gはつながるようになっているらしく、スマホを持っている人は増えているらしい。

「そんな場所に生まれついたら、家族がみんな大学なんか行ったことがなかったら、どうなっていたのだろう。」

そう考えたことは何度もある。現に母はそうやって育ち、職を求めて島を出た。母は高卒ではあるが高校では成績が優秀で進学すると思われていたらしい。もしもそんな人物が島ではなく都会に生まれていたらどうなっていたのだろう。

自分にできること

上述のような経緯があるので、自分は教育格差に対する問題意識を持っている。

しかし、個人でできることはあまりに限られすぎている。ここまで自分の人生を大きく切り開いてきた「インターネット」や「ITテクノロジー」という武器でさえ、島の子供たちには届かない。それが現実なのだ。

でも、まったく何もできないわけではない。自分はふるさと納税で毎年半分くらいは五島市に寄付をしている。その用途に「教育」がある。自分の納める住民税の一部だけでも問題の解決に使われるのなら、と思っている。

結論

教育格差という問題は、少なくともネットのコミュニティではかなり認知度や問題意識を持たれていると思う。「問題意識を持っているけどどうしたらいいかわからない」と思っている人が、もしこの記事を見て何か行動を起こすきっかけになってくれたらうれしい。

参考記事

他にもこの記事にも大きな印象を受けた。

anond.hatelabo.jp

*1:なんかこの話昔もした気がするな...。